近年、地方を舞台としたアートイベントが盛り上がりを見せている。
大企業がスポンサーになり、海外から有名なアーティストを呼んだり、広域な地域で実施している大規模なモノもあるが、小規模だからこそできることもある。
上畠(うわばたけ)集落は
富山県南砺市利賀村の中でも特に過疎化が進んでいる地区のひとつである。
山の上にあり、雲を見下ろすことができる。
水がきらきらしていて、美味しい野菜が育ち、民家の周りには綺麗な花が植えられている。
そんな集落で上畠アートは生まれた。
今年で10年目9回目を迎える上畠アートは2007年に限界集落に人通りを取り戻すことを目的に住民とアーティストが協力して立ち上げた。インスタレーションと呼ばれる技法を用いて民家に作品を展示することで村内に人を呼び込んだ。
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都会から村に通う私たちは2010年の4回目からイベント運営のサポート・企画立案するスタッフとして参加している。2009年の3回目で終了の可能性もあったが、2010年から普段は都会に住む社会人がスタッフとして参加したこともあり4回目、翌年5回目を村内で開催することができた。
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※インスタレーション
インスタレーションとは空間全体をアートに見立てる技法のこと。
「インスタレーションは絵本の1ページ目のような存在」だとあるアーティストさんから聴いた。
観た人がそこから自分なりの物語を想像できるような作品であって欲しいと言う想いがその言葉には含まれているのだと思う。
民家に作品を展示していた2011年の5回目までは、家主を始めとした住民と県内外から訪れるお客さんはもちろん、アーティスト・運営をサポートしているスタッフとも準備や片づけを通じて地域とのコミュニケーションがあった。
会場が村内から離れてからはやはり村内で開催していた時期と比べると住民との関わりは少なくなったが、関係そのものが途絶えてしまったわけではなかった。
住民の中には暑い中、坂道を登ってアート展の見学に来て下さる方もいた。機材の管理やアーティストやスタッフが寝泊まりするために公民館を引き続き貸して頂いたり、ご飯に困るだろうと野菜のおすそ分けを頂くこともあった。
私たちもアート展期間中だけでなく、春のお祭りや初夏の草刈りのお手伝いさせて頂いてきた。
2012年6回目には子供も楽しめるようにと利賀の宝探しと題して、会場に村の人に向けた手紙を入れた瓶を隠した。スーパーボールを夢中で探していると、自然と手紙にも目が留まるだろうと考えた。アート展に訪れたお客さんにも都会から通う若者と村との繋がりを知ってもらうきっかけを作るのが狙いだった。
イベントを楽しんだ子供が「来年も来ようね!!」とお母さんに話すと、お母さんは僕の方を向いて「じゃあ、お兄ちゃんに来年も頑張ってね!とお願いしないとねー。」と声をかけてくれた。
イベントを継続させることは決して楽なことではない。資金繰りもあるが、地方の小さなイベントにとっては継続させるための体制構築が欠かせない。ただでさえ過疎化が進んでいる地域でイベントを行うのだから、そこで持続可能な体制を構築し続けることは難易度が高い。
これまで上畠アートの継続が危ぶまれたことは何度もあったが、そのたびに転機は訪れてきた。
アーティストの間で父から子へと継承することで、都会から通う若者がスタッフとして参加し、社会人から学生に継承していくことで、会場を集落から一般社団法人管理の施設に移すことで今年まで継続することができた。存続の危機の度に上畠アートは生まれ変わり高みを目指してきた。
2014年までは毎年実行してきたが、2015年からは二年に一度の開催にした為、上畠アートは今年で10年目9回目を迎える。上畠アートが節目となる10回目を迎えるためには、また一度生まれ変わる必要があるのだろう。
上畠アートのひとりのファンとして今年のアート展ではそのための仕掛けをいくつか用意しながら、お客さんに楽しんでもらうことはもちろんのこと、関わる人たちが皆ハッピーなイベントを目指したい。
~続く
★今年2016年の開催はシルバーウィーク9/17(土)・18(日)・19(月)の3日間、会場は瞑想の郷です
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